1977年に歯学部の開学と同時に発足した第一口腔外科学教室と第二口腔外科学教室は、2004年に顎口腔疾患制御外科学講座に統合されました。そして、2014年の組織改編で、顎口腔疾患制御外科学講座は顎顔面口腔外科学部門と口腔腫瘍外科学部門からなる大講座となり、講座の名称も口腔外科学講座となりました。私たち口腔外科学講座の特長を敢えて挙げるならば、出身大学にとらわれず、多様性を重んじ個性を慈しむリベラルな学風であると思います。歯科界をとりまく環境には大変厳しいものがありますが、厳しい時代であるからこそ、仲間と夢や志を語ることも必要ではないかと思います。
大学付属病院口腔外科には地域の歯科診療における基幹病院“最後の砦”として、標準治療を安全に、そして確実に行うことが求められています。当科では全国の歯学部付属病院に先駆けて手術用ナビゲーションシステムを導入しました。本システムを顎変形症手術、顎骨腫瘍摘出手術などに適用することで、より正確で、安全な手術が可能となります。また、私たちは「診療の核となる新たな専門分野」として、口腔癌切除に伴う広範な組織欠損、奇形、あるいは顎発育異常などに対する顎骨再建ならびに歯周組織の再生医療、そしてインプラントなどを用いて咀嚼、言語、および嚥下機能の回復を図る、顎口腔機能再建外科を発展させて行きます。
研究における私たちの強みは、口腔生化学講座を始めとする学内基礎系講座や国立がん研究センターなどの世界をリードする学外施設と共同研究を行っていることです。これらの研究は主に大学院生が担っていますが、口腔外科専門医を目指す歯科医師が病態を生物学的手法で探究する基礎研究に一定期間没頭することは,専門医としての基礎を固める上で重要であると考えています。
臨床、研究とならび私たちに課せられた重要な使命は、次世代の口腔外科を担う人材の育成であろうと思います。口腔外科の専門家として大成するためには、臨床の現場から必然的な要求として出てきた課題を研究し、その成果を臨床に還元して行こうとする姿勢が常に求められます。深く臨床に関わり、患者を前にして真剣に悩み考察する場を与えることで、研究に対する情熱を持った口腔外科医を育てたいと考えています。
私はこれからも昭和大学口腔外科の素晴らしい伝統を引き継ぎ、病める人々を救うという医療人としての良心を忘れずに日々研鑽を続けて行きたいと願っています。どうか、皆様方の一層のご支援を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。
教授 代田 達夫