研修希望の方へ 臨床研修医の教育

専門領域を確立しよう

わが国の歯科医療水準はこの30年間で目覚ましい進歩を遂げています。しかし一方では、歯科界を取り巻く環境が年々厳しさを増していることを、皆さんも実感されていることと思います。「歯科医師過剰」という言葉で語られている歯科医師の将来に対する不安や閉塞感は今に始まったことではありません。30年ほど前に歯学部学生であった私が聞かされた「予防歯科がこのまま発達して行くと齲蝕がなくなるから歯科医師は不要になる」との話を思い起こしますと、「歯科医師過剰」は何時の時代になっても不変なものであろうと思われます。全ての歯科医師が従来の一般歯科を指向するならば、10万人にも達する歯科医師数は確かに多すぎると言えます。このような時代であるからこそ、皆さんは自分たちが活躍できる専門分野を確立すべきではないでしょうか。

口腔外科の魅力

口腔外科の診療域には咀嚼、嚥下、言語といった重要な機能が集中し、手術の結果は患者のQOLに直結します。したがって、口腔外科は日々真摯に臨床に取り組む姿勢に加え、全身管理などに関する幅広い知識、繊細な感性、高度な手術手技、そして強靭な精神力と体力が要求され、歯科医療の中では最も専門性の高い分野と言えます。しかし、診療の合間に患者やその家族の笑顔や喜びを実感できる、日々の努力や情熱に見合うだけの魅力を秘めた診療科でもあると思います。

顎顔面口腔外科学部門における教育

臨床研修医の皆さんに対しては、(1)社会人・職業人としての自覚を持たせる、(2)チーム医療を担えるコミュニケーション能力を含む臨床能力を鍛える、そして(3)研究マインドをもった医療人を育成する、の3項目が柱となると言われています。この中で「研究マインドをもった医療人」とは「教えられたことを実践することで満足するのではなく、自ら考え、調べ、行動できる医療人」であると考えています。そこで、私たち口腔外科の臨床研修では単なる診療技術の研修として捉えるのではなく、広い視点を持って、研究などにも意欲を持てるように指導したいと考えています。
顎顔面口腔外科では昭和大学歯科病院の口腔外科外来と病棟を2か月間毎に研修してもらいます。口腔外科の外来診療では紹介患者に対する診察・診断、あるいは抜歯等の小手術を経験してもらう予定です。また、病棟ではチームの一員として顎変形症や顎骨腫瘍などに対する手術やその術後管理を体験してもらいます。以上のような研修を通して、口腔外科領域に対する興味を抱いてもらいたいと考えています。

口腔腫瘍外科学部門における教育

口腔癌は歯学部教育でも重要な疾患です。頭頸部癌の中で最も症例数が多いのは口腔癌であり、この疾患を発見するのは地域の歯科医師であることが多く、初期診療を行う可能性の高い歯科医師に口腔癌の教育は重要な項目といえます。口腔腫瘍外科学部門での研修は、主として昭和大学病院頭頚部腫瘍センターで2か月間行います。この間の研修では、全身管理を含めた口腔癌の診療を経験することや、咽頭、喉頭、副鼻腔、頸部など周辺疾患についても経験することができます。また、診療、手術だけではなく、放射線治療やがん薬物療法についての知識も習得することができますので、皆さんにとって非常に充実した研修になると考えています。

【体験談】口腔外科での研修を終えて

私は昭和大学歯科病院の外来と病棟、昭和大学病院の頭頚部腫瘍センターの3か所をそれぞれ2か月ずつ回らせていただきました。
外来では粘膜疾患や炎症の治療、親知らずの抜歯を、病棟では抜歯のような小手術から、顎骨の変形を治すような大手術、頭頸部腫瘍センターでは医科と連携しての治療など、大学病院でしか勉強できないようなケースを経験させていただきました。
また、技術面だけでなく、問診や治療内容の説明などを行うことにより、患者さんがどのような不安を感じているかを学び、コミュニケーション能力の面でも成長できたと思います。
歯科口腔外科で先生方の背中を見て学び、自分の目指す歯科医師像をより鮮明に思い描くことができました。今年学ばせていただいたことを活かして、今後働きたいです。

令和3年度 研修医 N.K.

口腔外科の研修では、患者さんの主訴に基づいた適切な検査・診断の重要性について学ぶことが出来ました。
特に外来での2ヶ月間は患者さんと近い距離で接する機会が多く、自身で説明をしたり、処置や処方をしたりと責任を強く感じる研修となりました。
勉強不足を痛感する場面も多々ありましたが、先生方にサポートして頂き多くの知識を吸収することが出来ました。口腔外科で学ばさせて頂いた半年間は貴重な時間となりました。来年度からも感謝の気持ちを忘れずに、医療人として精進して参ります。

令和3年度 研修医 M.F.

私は第一希望である口腔外科で半年間研修させて頂き多くのことを学びました。外来、病棟、頭頸部腫瘍センターで2ヶ月ずつ研修を行いました。外来では、抜歯・粘膜疾患・炎症に関する知識・手技だけでなく患者さんとの接し方、地域の歯科との関わり、全身疾患を持つ患者さんに対しての対応などを学ぶ事ができました。病棟では、大学病院ならではの顎変形症や顎骨病変の手術を経験することができました。頭頸部腫瘍センターでは、口腔外科の先生方だけでなく耳鼻咽喉科や形成外科の先生方からも多くの事を学ばせて頂きました。
半年間という短い期間でしたが、外来での抜歯や全身麻酔下での多数歯抜歯などの症例を多く経験することができました。また、これから身につけていかなければいけない手技や知識を自覚することができた有意義な研修であったと思います。

令和3年度 研修医 Y.M.

当初からの第一希望であった口腔外科で研修をさせていただき、本当に良かったと思っています。私は昭和大学歯科病院の外来と病棟、昭和大学病院の頭頚部腫瘍センターの3か所をそれぞれ2か月ずつ回らせていただきました。半年間はあっという間で、先生や患者さんから教わることばかりで毎日が新鮮でした。実際に自分で抜歯をして薬剤を処方すること、粘膜疾患や炎症の経過をみること、小手術から長時間の大手術まで大学病院でしか見ることのできない症例を数多く経験させていただきました。私がこの研修で学んだ一番大切なことは自分の一つ一つの治療行為が患者さんの命に関わり、しっかりと責任を持って行動しなければならないということです。
半年間の研修を終えて、知識や技術はもちろん、医療人として精神的な面で成長できたように感じています。

令和元年研修医 Y.S.